人事部は、なくてもいい。
でも、人事をしなくていい歯科医院はありません。
一人目のスタッフを採用した、その日からです。
「うちくらいの規模で、人事なんて必要ない」——そう考えるのは、不自然なことではありません。人事という言葉から、採用や給与計算、労務管理を専門に担う部署をイメージすれば、歯科医院に「人事部」という組織は必要ないかもしれません。
しかし、人事部という組織と、人事という営みは別のものです。育成、対話、役割分担、評価、相談対応、マネジメント、成長支援——これらは、人事部の有無にかかわらず、スタッフを一人採用した瞬間からすでに始まっています。この記事は、「人事部をつくりましょう」という話ではありません。すでに始まっている人事を、院長個人の頑張りで回し続けるのか、経営の仕組みとして整えるのか。その問いについて、BloomoreHRの考え方を説明します。
その悩みは、実はすべて「人事」の話です
スタッフが思うように育たない。任せられる人がなかなか増えない。評価をどう決めればいいのかわからない。スタッフとの認識がずれる。相談や判断が院長に集中してしまう。リーダーが育たない。スタッフによって教え方がバラバラになる。
これらは、一つひとつ別の問題のように見えます。しかし、いずれも「人と組織をどう経営するか」という一つのテーマにつながっています。人事という言葉を使っていないだけで、その一つひとつが、すでに人事の課題です。
開業時に、物件・設備・採用を整えることは自然に考えられます
歯科医院を開業するとき、物件、内装、ユニット、設備、採用、集患など、診療と医院運営に必要なものを一つずつ整えていきます。
ユニットがなければ、診療はできません。人がいなければ、医院は運営できません。そして、人が集まっただけでは、組織は自然には育ちません。
設備への投資と、人と組織の仕組みへの投資は、同列に扱われるものではありません。ただし、どちらか一方だけで医院経営が完結するわけでもありません。設備も、人と組織の仕組みも、医院経営を支える異なる種類の基盤です。
人を採用した時点で、人事はもう始まっています
採用した人に、何を期待するのか。どう育てるのか。何を目標にするのか。どう対話するのか。どう評価するのか。次に何を任せるのか——これらは、制度を用意しているかどうかにかかわらず、スタッフを採用した瞬間からすでに発生しています。
「人事にコストをかけるか」ではなく、「どう整えるか」の問題です
だとすれば、問いは変わります。「人事にコストをかけるかどうか」ではありません。すでに発生している人と組織の営みを、院長個人の頑張りと場当たり的な対応で処理し続けるのか、経営の仕組みとして整えるのか。その違いです。
人事に時間や費用がかかること自体は事実です。BloomoreHRは、それを否定しません。重要なのは、すでに発生しているものに、意識的に向き合うかどうかという選択です。
医院が育つほど、「院長の頭の中」だけでは伝わらなくなります
人数が少ない時期には、院長が一人ひとりを直接見て、直接伝えて、直接判断することで、医院は成立することがあります。
しかし組織が育つにつれて、次のような循環が生まれていきます。
院長が全員を直接見る → 院長が全員へ直接伝える → 院長が全員を直接判断する → スタッフが増えても、判断が院長へ集まり続ける → 育成・評価・相談対応まで院長へ集中する → 任せたいのに、任せられる状態がつくれない
ここで重要なのは、院長の能力不足ではありません。組織は成長しているのに、経営の仕組みが「院長一人で見られる時代」のまま変わっていない、という構造の問題です。
人の仕組みを整えないことは、人事部がないという話ではありません。医院が成長しても、人と組織に関する判断を院長個人へ集め続ける経営構造を、そのままにする、ということです。
新人、中堅、リーダー、職種ごとの役割が生まれていくなかで、組織として何を大切にし、誰に何を期待し、どう成長してほしいのか——それを言葉と仕組みにしなければ、院長自身が経営のボトルネックになり得ます。
人事は、医院が大きくなってから考えるものではありません。人が働く組織を経営すると決めた時点で、すでに人事は始まっています。
人事は、スタッフを管理するためのものではありません
人事という言葉から、管理、査定、給与、労務、評価をまず連想するかもしれません。管理は、業務を安定して運営するために必要な機能です。それ自体を否定するつもりはありません。
そのうえで、BloomoreHRが考える人事は、それに加えて、人が成長し、本来の力を発揮できる環境を整えるところまでを含みます。制度も、評価も、AIも、CRMも、BPOも、すべては人と向き合うための手段です。「人が先、手段は後」——これがBloomoreHRの一貫した立場です。
人と組織への考えを、仕組みに落とし込んだものが「人事制度」です
ここまで、人事を「経営の仕組みとして整えるべき営み」として説明してきました。では、具体的に何を整えるのか。役割、目標、評価基準、等級、報酬、対話、育成——こうした要素を、院長個人の頭の中だけでなく、組織として共有できる形へ落とし込んだものの一つが、人事制度です。
制度が先にあるわけではありません。まず人と組織にどう向き合うかという考え方があり、その考え方を仕組みにしたものが人事制度です。歯科医院での具体的な制度設計については、別記事(歯科医院の人事評価制度のつくり方)で扱っています。
人事制度は、人と向き合うための土台|「向き合う力」という循環
ただし、人事制度をつくること自体はゴールではありません。BloomoreHRでは、目標設定→対話→公正な評価→成長の可視化→次の目標設定という循環を、「向き合う力」と呼んでいます。
制度は、この循環を止めずに回し続けるための土台です。制度を導入しても、運用が伴わなければ機能しないという点については、以前の記事(評価制度を導入しても、機能しない理由。)で詳しく扱いました。制度と運用は、両方揃って、はじめて機能します。人事制度もまた、それ単体では機能しません。人と向き合い続ける営みがあって、はじめて意味を持ちます。この考え方については、BloomoreHRの人と組織への向き合い方でも紹介しています。
人が本来の力を発揮できる環境をつくる|「人が咲く仕組み」
人事とは、人を無理に変えることでも、人を管理することでも、人を点数で選別することでもありません。人が本来持っている力を発揮できる環境を整えること。BloomoreHRでは、これを「人が咲く仕組み」と呼んでいます。
花を無理に咲かせることはできません。土をつくり、光を与え、育つ環境を整えることならできます。人事という営みも同じだと、BloomoreHRは考えています。
BloomoreHRが目指しているのは、人を無理に変えることではなく、人が本来持っている力を発揮できる環境を、経営の仕組みとして整えることです。
まとめ|人事も、医院経営を支える基盤のひとつ
歯科医院に、人事部は必要ないかもしれません。しかし、スタッフを一人採用した時点から、育成、対話、評価、役割調整といった人事の営みは、すでに始まっています。
問題は、人事にコストをかけるかどうかではありません。すでに発生しているその営みを、院長個人の頑張りで回し続けるのか、経営の仕組みとして整えるのか。その選択です。
人事は、一部の大きな医院だけが考えるものではありません。人を採用し、人と一緒に医院をつくっていくと決めた時点から、人と組織について考えることは、すでに経営の一部です。
BloomoreHRは、人を大切にするための仕組みを整えることが、特別な取り組みではなく、医院経営の当たり前になるべきだと考えています。
よくある質問
小規模な歯科医院でも人事は必要ですか?
規模の大小にかかわらず、育成や評価、対話といった営みはすでに発生しています。人事部を置くかどうかではなく、その営みを意識的に整えるかどうかが問いになります。
人事とスタッフ管理は同じですか?
異なります。管理は、業務を安定して運営するために必要な機能です。BloomoreHRが考える人事は、それに加えて、人が成長し、本来の力を発揮できる環境を整えるところまでを含みます。
人事制度は、いつから必要になりますか?
「何人以上になったら必要」という基準はありません。組織が育ち、新人・中堅・リーダーといった役割が生まれ始めると、院長の頭の中だけでは伝わらないことが増えていきます。その変化を感じ始めたときが、考え始める一つのタイミングです。
まず何から始めればよいですか?
制度をゼロからつくることより先に、「人と組織にどう向き合いたいか」という考え方を整理することが土台になります。歯科医院での具体的な制度設計については、別記事(歯科医院の人事評価制度のつくり方)で扱っています。